大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)117号 判決

本件記録によれば、本訴請求について、昭和六二年五月一一日の原審第一二回口頭弁論期日において、控訴人と被控訴人間に、左記の趣旨の裁判上の和解が成立したことが明らかである。

和解条項

一 被控訴人(原告)及び控訴人(被告)は、原判決添付物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)及び同物件目録記載の土地についての借地権(以下「借地権」という。)が持分割合各二分の一で被控訴人及び控訴人の共有であることを確認する。

二 被控訴人及び控訴人は、本件建物を借地権つきで競売し、その競落代金から競売申立及び競売手続に要した費用を差し引いた残額を被控訴人及び控訴人が各二分の一ずつ取得することを合意する。

三 被控訴人及び控訴人は、本件建物及び借地権に関する権利義務を左記条項のとおり清算することを合意する。

1 昭和六一年一二月末日までに本件建物から得られた権利金、家賃から本件建物及び借地権について生じたローン返済金、地代、固定資産税、都市計画税、家賃収入に対する所得税、水道事故補償金、借入金利子、増築費等の諸費用を差し引いた残額を二〇〇万円と定め、被控訴人は既に送金済みの一〇〇万円を控除した残額一〇〇万円を昭和六二年六月末日限り控訴人訴訟代理人方に持参または送金して控訴人に支払う。

2 本件建物から得られる昭和六一年一二月末日までの賃料及び管理費のうち賃借人が未払いとしているものは控訴人において払い渡しを受けて取得する。

3 本件建物の昭和六二年一月一日以降の賃料及び管理費は、控訴人において支払いを受け、ローン返済金、地代、固定資産税、家賃収入に対する所得税の支払いにあて、残額は被控訴人及び控訴人が各二分の一ずつ取得する。

控訴人は右収入及び支出に関する証明資料を保存し、被控訴人の要求があればこれを随時開示しなければならない。

右によれば、被控訴人の請求全部につき裁判上の和解が成立したと認められるから、本件訴えはこれにより終了したものと言わなければならない。

民法二五八条に基づく共有物分割請求の訴えは、形成訴訟であり、実質的非訟事件であると解されているけれども、共有物分割につき代金分割の実施方法として、競売によるべき旨の合意を裁判上の和解によって有効になし得るものとすることは何ら差し支えない。けだし、右競売によるとする旨の合意は、当事者の任意に設定し得る法律関係であり、これにより、当事者に競売申立の権能を与える効果を生ずるにすぎない(この点に関する限り抵当権設定契約と何ら異ならない。)のであるから、競売の実施は必ず判決によらなければならないものと解すべき合理的理由はない。そして、当事者は、この和解により、民事執行法一九五条、一八一条一項一号に基づく競売の申立をなし得るものというべく、このほかに、更に競売を命ずる旨の判決を要するものではないといわなければならない(なお、実際的見地からみても、もし、任意売却による代金分割の協議は有効であるが、競売による代金分割の協議は無効であり、競売による代金分割のためには競売を命ずる旨の判決を要するとするならば、後者の協議をした共有者は競売の実現のために馴れ合い訴訟を起こすことになるであろうが、この場合裁判所は事実上競売を命ずる判決をせざるを得ないのであるから、この訴訟は時間と労力の浪費という外はなく、従って競売を命ずる旨の判決は不要であるとする方がより実際的であり合理的である。)。

(武藤 菅本 秋山)

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